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役立つ税金コラム

役立つ税金コラム

第1回 「退職所得の3つのメリット」を知っていますか?

近年、我が国では「事業承継」が大きな問題となっています。平成20年5月には「中小企業経営承継円滑化法」という法律が成立し、国をあげて中小企業の事業承継を支援しているのです。

この法律が出来たことにより「後継者」が会社を継ぎ易くなり、「先代経営者」も安心して「引退」できると、実務界では期待が膨らんでいます。

しかし、法律は整備されても「別の問題」で「幸せな引退」を迎えられない経営者が急増中だということをご存知ですか?

と言うのも実は、現在「引退」を迎えようとしている経営者は、「後継者問題」のほかに「退職金問題」を抱えている方が多いのです。

経営者の皆さんは漠然と「退職金は当然もらえるもの」と思っていませんか?

確かに「もらう権利」は有ります。

しかし「もらうお金」は本当に有りますか?

「権利」は有るけど「お金」が無いという切実な問題が我が国で蔓延しているのが事実です。現在の不景気もあいまって、泣く泣く「退職金を放棄する」という経営者も多いのです。

もっと早く「退職金の税金上のメリット」を知っていたら、もっと早く「退職金の財源確保」に着手していたのに・・・。

という経営者の声にならない声が聞こえてきそうです。

ということで、今回は「退職金」について「3つのメリット」を確認してみたいと思います。

【1】退職所得には3つのメリットがある

メリット1 みなし経費(退職所得控除額)がある

「退職所得控除額」とはお金の支出が無いにもかかわらず退職金から控除することができる、いわば「みなし経費」のようなものです。勤続年数が長い程その額は大きくなります。

具体的には、以下のケースに応じ、その額を計算します。

(1)勤続年数が20年以下の場合

控除額 = 40万円 × 勤続年数

※例えば、勤続年数15年なら600万円まで税金が課されないということになります。

(2)勤続年数が20年超である場合

控除額 = 40万円 × 20年 + 70万円 ×( 勤続年数 - 20年 )

※例えば、勤続年数30年なら1500万円まで税金が課されないということになります。

メリット2 さらに2分の1になる

退職所得は退職所得控除額を引いたあとの金額をさらに2分の1することができるのです。つまり、退職所得控除後の金額の2分の1に対しては税金が全くかからないということですから、非常に優遇されているといえます。

例えば、勤続30年の役員が3000万円の退職金をもらった場合の課税対象額は、{3000万円 - 1500万円(控除額)}× 1/2 = 750万円

ということになります。これなら「高い役員報酬で高い税金を払うなら、役員報酬を多少おさえても、その分役員退職金でもらいたい」ということを考えたくもなりますよね。

メリット3 おまけに分離課税なのです

さらに、退職所得は税率の面でも有利といえます。通常は各種所得は合計されて、それに税率を乗じて計算します(これを「総合課税」といいます)。つまり、所得が大きい部分には最高で50%(所得税・住民税合算)の税率を乗じて計算することになるわけです。

しかし、退職所得は「分離課税」が認められています。「分離課税」とは、他の所得(例えば、給与所得、不動産所得など)と分けて、退職所得だけで税金を計算することです。

これは、退職所得について低い税率を適用することができるというメリットがあります。

【2】 退職金の財源はどうする?

このように非常に税務上優遇されている退職金ですが、肝心の支給財源が無ければ「絵に描いた餅」ですよね。支給財源として考えられるものは何でしょう。以下それぞれの財源候補を検討してみたいと思います。

(1) 現金・預貯金

もし、現預金があれば、それが一番安心ですよね。しかし、多くの中小企業は日々の資金繰りの中で現預金が貯まらないという問題を抱えているように思えます。やはり「有れば使ってしまう」ものですよね。

(2) 株式等の有価証券の譲渡

株式等はハイリスク・ハイリターンの商品です。財テクの上手・下手に大きく影響を受けますから、確実性は乏しいですよね。

(3) 所有不動産の譲渡

土地・マンション・駐車場・倉庫・・・いずれにしても、バブル時代のように不動産を希望額で売ることは難しいのではないでしょうか。確実性という面からもやはり乏しいと言わざるをえませんね。

(4) 借入金

退職金は、過去の功労に報いるために支払われるものですから、支出に見合う収益は生みません。それを借入金で支払うとなると、その後の会社経営に大きな支障を与えかねません。また、現実問題として金融機関も退職金の財源のための融資には応じづらいのではないでしょうか。

(5) 生命保険

(1)から(4)の財源を検討してみてもわかる通り、これからの退職金の財源としてはイマイチと言わざるをえませんね。

では何が最適なのか? 確実性と安心性において、やはり「生命保険がもっとも適している」と言わざるをえませんね。その理由を次に述べてみたいと思います。

【3】 なぜ支給財源に生命保険が適しているのか?

(1)確実に資金をプールできる

退職金用に現金・預貯金を単純に積み立てていくのは並大抵のことではありません。現預金は取り崩しやすいので、資金繰りが苦しいとつい使ってしまい、貯まっていかないのが普通だからです。

その点、貯蓄性のある生命保険は毎月または毎年保険料を支払っていれば、確実に資金を準備できますし、積み立てられている保険料は、決算書上「保険積立金」「長期前払保険料」などの科目に表示されるため、「現預金」科目のように社長の資金繰り計算に入ることはあまりありません。

ですから退職金用の資金としてプールしやすいのです。

(2)不測の事態に対応できる

退職金は数千万円から億単位という高額になります。そんな高額な現預金を中小企業が通常の資金繰りから用意しておくことはかなり難しいでしょう。

ましてや不測の事態が発生した時などは高額な死亡退職金に対応することは不可能に近いのではないでしょうか。

その点、生命保険なら死亡保障の場合、高額な保険金がおりるから安心ですよね。

【4】 最後に申し上げたいことが2つ・・・

(1)退職金規程の作成を

経営者としては引退後をゆとりあるものにするためにも退職金をたくさんもらいたいでしょう。ましてや税務上かなり優遇されていますし・・・。

そんな退職金でトラブルにならないように、「(役員)退職金規程」を必ず作って下さい。一般的に中小企業では、「(役員)退職金規程」を作成していないところが、まだまだ多いようです。しかし

① 税務署との税務上のトラブルを回避するため

② 残された遺族に退職金を確実に支払ってもらうため

「(役員)退職金規程」は大変有効ですので、是非、作成して下さい(意外に会計事務所はそこまで面倒をみているところは少ないようです・・・)。

(2)税制改正の動向に注意を

今のところ非常に優遇されている退職所得ですが、将来の税制改正でその優遇幅が縮小される可能性が無いとは言えません。税収不足の昨今、国としては優遇幅を縮小したいというのが本音でしょう。ですから税制改正の動向にはくれぐれも注意して下さい。

そのために顧問税理士とコミュニケーションを密に取って情報収集すると共に「今やらなければならないこと」を一緒に考えてもらい、そして行動に移すことが大事ですね。

2011年4月

聞き上手な税理士菊池税理士事務所
   
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